・寺院にある墓を両親から継ぐことになったが、自分の宗教・宗派と違う。この場合、お墓の承継と埋葬は可能なのか?
墓地、埋葬等に関する法律13条では、「墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当な理由がなければこれを拒んではならない。」と定められています。
ここで正当な理由が問題になりますが、過去の通達(厚生労働省→内閣法制局)では、内閣法制局より次の回答が示されています。
《一部抜粋》
宗教団体がその経営者である場合に、その経営する墓地に他の宗教団体の信者が埋葬又は埋蔵を求めたときに、依頼者が他の宗教団体の信者であることのみを理由としてこの求めを拒むことは、「正当な理由」によるものとはとうていみとめられないであろう。
(省略)したがって、宗教団体が墓地を経営する場合に当該宗教団体がその経営者である墓地の管理者が埋葬又は埋蔵の方式について当該宗派の典礼によるべき旨を定めることはもちろん許されようから、他の宗教団体の信者たる依頼者が事故の属する宗派の典礼によるべきことを固執しても、こういう場合の墓地の管理者は、典礼方式に関する限り、依頼者の要求に応ずる義務はないといわなければならない。(省略)
上記通達を要約すると、他の宗教(宗派)の方が、両親等の墓を承継し、その両親等の遺骨の埋葬を寺院にお願いした場合、埋葬する寺院は信者(檀家)ではないとの理由で拒否できないということになります。しかし、埋葬する場合の典礼(儀式・儀礼)等については、その寺院の方式に従い、自己の宗教(宗派)の典礼をその寺院に強要できないということが記載されています。
しかし、諸事情により、埋葬する寺院の典礼に従わない・無典礼でも埋葬を拒否できないとした判例もあります。
ここまで一度整理しますと、埋葬する寺院の信者(檀家)でなくても墓地の承継と埋葬は可能であると考えられるが、埋葬に関する典礼等においては、原則、その寺院のしきたりに従う。但し諸事情により無典礼等により埋葬が許される場合もある。ということになります。(最終的な判断は裁判所になります。)
ここまでは、過去の裁判所の判例や厚生労働省の通達等を参考に解説させて頂きました。しかし、一般的には宗教や宗派が違う場合、一旦、その寺院の墓を墓じまいし埋葬されている遺骨は、新たに契約した霊園等に改葬される方が多いかと思います。霊園や公営墓地等の場合、宗教や宗派が問題になる事は、通常ありません。(念の為、墓地管理者に確認して下さい。)
過去の判例等を見て行くと、信者(檀家)でなくても墓地承継や埋葬は、その寺院の典礼に従って行う場合には、寺院側は拒否できないものと考えられます。しかし現実的には難しいところもあります。
一般に不幸があった場合、①寺院のご住職に連絡→②葬儀供養+戒名→③墓地に埋葬(納骨供養)という流れになります。葬儀と埋葬は別物と考えられますが、この一連の流れに沿った形でない場合、寺院の住職に埋葬を拒否される場合もあります。
ここで、①その拒否について争うのか?、②葬儀等を行って頂き寺院に埋葬するのか?、③宗教が違うので他の霊園等に埋葬し承継する墓は、そのまま維持するのか?或は、墓じまいする。など考えることになります。
そもそも、寺院側と揉めてしまった場合、ご住職と顔を合せづらくなり、お墓も別の場所にしたいと思われる方が多いのではないでしょうか?ですので、ご自身の宗教(宗派)と違う場合、事前に墓じまいを行い、希望の霊園等に改葬しておくことも一つの方法です。
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