【お墓は不要か】必要か?いらない場合の選択肢|大塚法務行政書士事務所(東京都)

【お墓は不要か】必要か?いらない場合の選択肢|大塚法務行政書士事務所(東京都)

「お墓はいらない」と考える方が増えています。この記事では、お墓を持たない選択肢(手元供養、散骨、永代供養墓、樹木葬)のメリット・デメリットを解説。後悔しないための選択肢と家族との話し合いのポイント、そして専門家への相談の重要性まで、お墓専門の行政書士が詳しくご紹介します。
行政書士 大塚博幸
行政書士 大塚博幸

悩む女性近年、「お墓はいらない」と考える方が増えています。維持管理費や寄付・お布施といった費用の負担、あるいは将来の承継者がいないといった理由から、お墓を持たない選択肢を検討する方が多くなりました。


しかし、大切なご家族が亡くなった際、ご遺骨をどのように供養するかは避けて通れない問題です。この記事では、お墓を持たない場合の具体的な選択肢から、お墓を持つ・持たないことのメリット・デメリット、さらにはご家族で後悔しないための話し合いのポイントまで、詳しく解説していきます。


1.お墓が不要と思われる場合

お墓を持たない選択をする場合でも、故人のご遺骨をどのように供養するかを検討する必要があります。ここでは、現代において主流となっている3つの供養方法について、詳しくご紹介します。

(1)手元供養

拝む女性
手元供養とは、ご遺骨の一部、またはすべてを自宅で保管したり、アクセサリーなどに加工して身近に置いて供養する方法です。近年、故人をより身近に感じたい、心の拠り所としたいという理由から選ばれる方が増えています。


特徴とメリット

法的な問題なし:ご遺骨を自宅で保管すること自体は、法律上の問題はありません。ただし、ご自宅の庭などに埋葬することは墓地埋葬法により禁じられています。

  • 心の拠り所に: 故人を常に身近に感じられるため、心の平安に繋がります。
  • 自由なスタイル: 祭壇を設ける、骨壺をリビングに置く、ペンダントやオブジェにするなど、供養の形を自由に選べます。
  • 費用を抑えられる可能性:墓石の建立や墓地の永代使用料が不要なため、初期費用を抑えることができます。
  • 将来の検討期間に: 当面の間、納骨先を急いで決める必要がなくなるため、時間をかけて最適な供養方法を検討できます。


注意点とデメリット

  • 残された家族への負担:ご遺骨の管理が長期にわたる場合、ご自身に万が一のことがあった際に、残されたご家族が新たな供養方法を検討・手配する負担が生じる可能性があります。
  • 保管場所の確保:自宅での保管には、適切な場所と管理が必要です。
  • 親族間の合意: 親族の中には、手元供養に対して理解が得られない場合もあります。事前にしっかりと話し合い、合意形成を図ることが重要です。


手元供養の一般的な流れ

①ご遺骨の粉骨化:ご遺骨をパウダー状に加工します。これにより、コンパクトになり、保管しやすくなります。火葬場で発行される「火葬証明書」は大切に保管してください。
②手元供養品の選定・購入: 骨壺、ミニ仏壇、アクセサリーなど、ご希望に応じた手元供養品を選び、購入します。
③ご遺骨の納め方: 手元供養品にご遺骨を納めます。供養の儀式を行いたい場合は、僧侶を招いて納骨供養を行うことも可能です。


【重要】埋葬許可証の保管

将来的に手元供養していたご遺骨を墓地へ納骨する可能性がある場合は、「埋葬許可証(火葬許可証に火葬済みの印が押されたもの)」を必ず保管しておきましょう。この書類は、初めて墓地へ納骨する際に必要です。


なお、一度お墓に埋葬されていたご遺骨を墓じまいして手元供養し、その後別の場所へ納骨する場合は、「改葬」の手続きが必要となり、別途「改葬許可証」が必要になります。

改葬許可申請書の詳細は【改葬許可申請書】取得・記入方法と必要書類をご覧ください。

 

手元供養のより詳細な情報や注意点については【手元供養】注意点と知っておくべきこと で詳しく解説していま

(2)散骨

小型船
散骨とは、ご遺骨を粉状にし、海や山などの自然の中に撒いて供養する方法です。「自然に還りたい」「永続的な供養の場は不要」と考える方々に選ばれています。


特徴とメリット

  • 費用を抑えられる:お墓の購入費用や維持管理費が不要となるため、経済的な負担を大幅に軽減できます。
  • 形式にとらわれない: 宗教や宗派にとらわれず、自由な形で故人を弔うことができます。
  • 自然への回帰:故人の「自然に還りたい」という願いを叶えることができます。
  • 管理の手間なし:将来にわたるお墓の管理の心配がありません。


注意点とデメリット

  • 供養の場がない:物理的なお墓がないため、お参りする場所がなくなることに寂しさを感じる方もいます。
  • 親族の理解:親族の中には、散骨に対して抵抗を持つ方も少なくありません。トラブルを避けるためにも、事前に十分に話し合い、全員の合意を得ることが非常に重要です。
  • 粉骨の義務:散骨を行う際には、ご遺骨を原型がわからない程度(多くの場合2mm以下)に粉末化することが、トラブルを避けるための慣習として推奨されています。
  • 散骨場所の制限: どこでも散骨できるわけではなく、節度をもって行われる必要があります。特に、陸上での散骨は、私有地や他人の迷惑になる場所ではできません。


散骨の一般的な流れ

①散骨業者の選定:信頼できる散骨業者を選びます。複数の業者から見積もりを取り、サービス内容や評判を比較検討しましょう。

 

②ご遺骨の粉骨化:散骨を依頼する業者に、ご遺骨の粉骨を依頼します。埋葬されていたご遺骨の場合は、洗浄・乾燥後に粉骨されます。

 

③散骨形式の選択:
合同散骨:複数のご遺骨をまとめて散骨する方法。費用を抑えられます。
個別散骨: 家族のみで船に乗り込み、個別に散骨する方法。故人との最期の時間をゆっくり過ごせます。
委託散骨:業者がご遺族に代わって散骨を行う方法。遠方にお住まいの方や、乗船が難しい方に適しています。

 

④散骨の実施: 選択した形式に基づき、散骨が行われます。委託散骨の場合は、散骨の様子を写真や動画で報告してくれる業者もあります。


【重要】後悔しないために

散骨は一度行うとやり直しができません。ご自身の希望だけでなく、ご家族やご親族の気持ちも十分に尊重し、慎重に検討することが大切です。

散骨の基礎知識や費用の詳細は【散骨の基礎知識】知っておきたい手続きと費用 をご覧ください。

 

墓じまいから散骨への流れの詳細は【墓じまいから散骨へ】手続きの流れと注意点で詳細をご確認いただけます。

(3)永代供養墓及び樹木葬

霊園
永代供養墓と樹木葬は、お墓の承継者がいなくても、霊園や寺院が永代にわたって管理・供養してくれるお墓です。近年、従来の一般墓に代わる選択肢として注目を集めています。


永代供養墓とは 

特徴

寺院や霊園が管理・供養を行うため、子孫に負担がかからないお墓です。単独で安置されるものから、他のご遺骨と一緒に合祀されるものまで様々な形式があります。

種類
  • 合祀墓(共同墓): 他の方のご遺骨と一緒に埋葬される形式。費用を最も抑えられますが、一度合祀されると後から取り出すことはできません。
  • 集合墓: 個別のスペースに一定期間骨壺のまま安置され、期間経過後に合祀される形式。
  • 個別墓: 一般墓に近い形で個別の区画を使用し、契約期間終了後に合祀される形式。


樹木葬とは

特徴

墓石の代わりに樹木を墓標とし、その根本にご遺骨を埋葬する自然葬の一つです。

種類
  • 里山型: 広大な里山の一画に、自然に近い形で埋葬されます。
  • 公園型: 公園のように整備された区画に、シンボルツリーの下などで埋葬されます。
  • ガーデン型: 庭園風にデザインされた区画に、花々や木々に囲まれて埋葬されます。


共通のメリット

  • 費用を抑えられる: 一般的な墓石を建てるよりも費用が安くなる傾向があります。
  • 管理の負担がない: 管理・供養は霊園や寺院が行うため、子孫に管理の負担がかかりません。
  • 宗派不問が多い:多くの永代供養墓や樹木葬は、宗派を問わず利用できます。
  • 承継者不要: 後継ぎがいない方でも安心して利用できます。


注意点とデメリット

  • 合祀される可能性: 一定期間の個別安置の後、最終的に他の方のご遺骨と合祀されるケースが多いため、個別のお墓を大切にしたいと考える方には不向きかもしれません。
  • 親族の理解:合祀されることや、自然葬であることに抵抗を感じる親族もいるため、事前に話し合いが必要です。
  • 再契約の必要性:新たに不幸があった際には、別途埋葬先を検討・契約する必要がある場合もあります。(同一施設でも契約は別になることが多いです。)


埋葬の一般的な流れ

①霊園・施設の選定:永代供養墓や樹木葬を扱う霊園・寺院は多いため、まずは場所や費用、希望する供養形式などを考慮し、いくつかの候補を絞ります。資料請求から始めましょう。

永代供養墓の詳細は【永代供養墓】基礎知識・選び方をご覧ください。

 

樹木葬の詳細は【樹木葬】基礎知識・選び方をご覧ください。

②現地見学: 候補となる施設を実際に訪れ、交通の便、施設の雰囲気、管理状況、清掃状態などを確認します。

 

③契約: 納得できる施設が見つかったら、契約を締結します。この際に、納骨の日程なども確認しておきましょう。

 

④ご納骨: 事前予約の上で、ご遺骨を納骨します。永代供養墓の中には、ご遺骨を引き渡し完了となる場合もあります。(後日施設側で納骨が行われます。)

2.お墓を持つ・持たない どちらが良いの?

(1)費用の問題

お墓を持つか持たないかの選択において、費用は重要な検討要素の一つです。

お墓を持たない場合

散骨や手元供養は、墓地の永代使用料や墓石の建立費用、年間管理費、お布施などが不要となるため、初期費用や維持費用を大幅に軽減できます。しかし、新たなご遺骨が発生するたびに、その都度供養方法を検討し、費用を支払う必要があります。


お墓を持つ場合

一般的なお墓は、初期費用が高額になる傾向がありますが、一度建立すれば代々受け継ぐことが可能です。長期的には、複数人のご遺骨を埋葬できるため、結果的に一人あたりの費用が抑えられる場合もあります。ただし、年間管理費やお布施などの継続的な費用は発生します。

→ お墓の契約・購入は【お墓の契約・購入】時期・費用・見学ポイント をご覧ください。

(2)宗教的問題

費用だけでなく、ご先祖様への供養の気持ちや宗教観も、お墓の選択に大きく影響します。

伝統的なお墓

「代々のお墓を守りたい」「ご先祖様と同じ場所に眠りたい」と考える方にとっては、物理的なお墓があることで、心の拠り所となります。定期的にお墓参りに行くことで、ご先祖様との繋がりを感じられる方も多いでしょう。


散骨や合祀

散骨は、物理的なお参り場所がないため、故人を偲ぶ場所がなくなることに寂しさを感じる方もいます。また、永代供養墓の合祀形式のように、他のご遺骨と一緒に埋葬されることに抵抗を感じる方もいらっしゃいます。


宗派の問題

従来の寺院墓地では宗派が限定されることがありますが、永代供養墓や樹木葬では宗派不問であることが多いため、宗教的な制約なく供養方法を選びたい方にはメリットとなります。

寺院墓地のメリット・デメリットの詳細は【寺院墓地】メリット・デメリットと選び方をご確認ください。

(3)メリット・デメリット

お墓を持つ・持たないのメリット・デメリットをまとめると以下のようになります。

項目 お墓を持つ(一般墓) お墓を持たない(散骨・永代供養墓・樹木葬など)
費用 初期費用高め、年間管理費・お布施等の継続費用あり 初期費用・維持費用を抑えられる傾向にある
管理 承継者が管理・清掃を行う必要がある 物理的なお参り場所がない、または共同の場になる
供養の場 物理的なお参り場所がある 物理的なお参り場所がない、または共同の場になる
承継 代々受け継ぐことが前提、承継者が必要 承継者不要
手続き 一度契約すれば、その後の埋葬手続きは比較的簡素 新たなご遺骨が発生するたびに、都度供養方法の検討と契約が必要になる可能性あり
伝統的な供養として受け入れられやすい 新しい形式のため、親族間の理解が必要になる場合も


最終的にどちらの選択が良いかは、ご自身の価値観、経済状況、そして何よりもご家族・ご親族の意向によって大きく異なります。将来にわたって、どのような形で故人を供養していきたいのか、そして誰にどのような負担をかけたくないのかを、費用面だけでなく、精神的な側面も踏まえて、ご家族で十分に話し合うことが大切です。

お墓選びで後悔しないためのポイントは【お墓選び】後悔しないための確認ポイント で詳しく解説しています。

(4)墓地承継者がいない場合

現在お墓をお持ちで、将来的に承継者がいない、または承継する方がいないという問題を抱えている場合、お墓は「無縁墓」となる可能性があります。無縁墓になることを防ぐためには、「墓じまい」を検討することが有効な解決策となります。


墓じまいとは

現在のお墓を撤去し、ご遺骨を取り出して別の場所に移す(改葬する)ことです。

お墓じまいの詳細は【お墓じまい】相談・手続代行 でご紹介しています。


墓じまい後の選択肢

墓じまいを行った後のご遺骨の供養先としては、主に以下の方法が挙げられます。

  • 永代供養墓への改葬: 霊園や寺院が管理・供養を行う永代供養墓へご遺骨を移します。
  • 樹木葬への改葬:樹木を墓標とする樹木葬へご遺骨を移します。
  • 散骨:ご遺骨を粉骨し、海や山などに散布します。
  • 手元供養:ご遺骨を自宅で保管したり、アクセサリーにするなどして供養します。

ご自身に万が一のことがあった際に、希望する供養方法(散骨や永代供養など)を行ってもらえるよう、生前にご親族とよく話し合い、意思を伝えておくことも非常に重要です。また、専門家にご相談いただくことで、スムーズな手続きと後悔のない選択が可能になります。

お墓の承継トラブルに関するQ&Aの詳細は【お墓の承継トラブル】Q&A・事例と対策 でご確認いただけます

3.近年の傾向

墓地
現代社会において、お墓に対する意識やニーズは大きく変化しています。お墓の維持管理の負担、承継者問題、そして多様なライフスタイルの広がりから、「お墓は不要」と考える方が増加傾向にあります。


特に、以下の点が近年の傾向として挙げられます。

  • 多様な供養方法の浸透: 散骨、永代供養墓、樹木葬といった、従来の一般墓にとらわれない新しい供養方法が広く認知され、選択肢として定着しています。
  • 経済的負担の軽減: お墓の建立や維持にかかる経済的な負担を避けたいというニーズが高まっています。
  • 少子高齢化・核家族化: 後継ぎがいない、遠方に住んでいるなど、家族構成の変化も「お墓は不要」と考える一因となっています。
  • 宗教観の変化: 宗教や宗派にとらわれず、自分らしい供養を望む方が増えています。


当事務所における「墓じまい」のご相談状況

当事務所では、これまで数多くの「墓じまい」に関するご相談を承ってきました。その中でも、寺院墓地を墓じまいし、永代供養墓や散骨へ改葬するケースが最も多くなっています。ご相談者様のお話をお聞きすると、主な理由としては以下の2点が挙げられます。

  • 「お墓の維持費用をこれ以上負担したくない」
  • 「子どもに将来的な負担をかけたくない」
  • 「お墓を継ぐ者がいない」

一方で、ご住職様との関係性や、ご自宅からの距離などを考慮し、遠方のお墓を墓じまいして、より身近な場所にある寺院墓地へ改葬される方もいらっしゃいます。どちらの選択が最適かは個人の価値観によって異なりますが、当事務所の経験から言えば、永代供養墓や散骨への改葬を選択される方が圧倒的に多いのが現状です。


まさに現代は、お墓のあり方が大きく変化する「過渡期」にあると言えるでしょう。

墓じまいの理由と改葬先選びのポイントは【墓じまい】主な理由と改葬先選びのポイント で詳しく説明しています。

4.お墓は不要・必要 まとめ

行政書士 大塚博幸
「お墓は不要か、必要か」という問いに対する答えは、ご自身のライフスタイルや価値観、そして何よりもご家族との合意によって変わります。


この記事では、お墓を持たない選択肢としての手元供養・散骨・永代供養墓・樹木葬、そしてお墓を持つこととの比較について解説しました。


もし、ご自身にとって最適な供養方法がどれなのか、あるいはご家族との話し合いをどのように進めれば良いのかなど、お墓に関するお悩みがございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。



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