墓地使用規則(契約約款)の指針(ひな形)について解説|大塚法務行政書士事務所(東京都)
厚生労働省から各都道府県等宛てに「墓地経営・管理等の指針について」通知が行われています。その中で、墓地使用契約約款(使用規則)についても述べられおります。これは、寺院様が作成する際に参考になりますので解説させて頂きます。
行政書士 大塚博幸
行政書士 大塚博幸

墓地使用規則(契約約款)の指針(ひな形)について

墓じまい日
● 墓地使用規則等は、寺院と檀家の方の墓地使用に関するルールを定めたものと言えます。又、何か問題等が発生した場合においても、その責任の範囲や所在を明文化しておく事で不要なトラブルを避ける事ができるものと考えられます。

 

厚生労働省では、「墓地経営・管理の指針等について」(平成12年12月6日生衛発第1764号 生活衛生局長から各都道府県知事等宛)通知が行われており、その中で墓地使用の契約は民事の問題ではあるが、契約の明確化等を図るべき観点から参考となる雛形を示すこととした。と墓地使用規則等について述べられています。

 

ここでは、上記指針を参考に解説いたします。

 

墓地使用契約約款(使用規則)

当該指針においては、表題は、墓地使用契約約款又は使用契約書とするのが望ましいとされています。(墓地使用規則という名称になっている場合が多いが、実際には契約約款である為、このような表題にすることが適切であろうと述べられています。)

第1条 目的

(目的)
第1条 本定款は財団法人〇〇〔宗教法人△△〕が経営する墓地(以下「墓地」という。)の使用及び管理に関し必要な事項を定め、その使用及び管理が適切に行われることを目的とする。

解説)当該指針では、何の為に定められているのか?明確にしておくこことが重要であると述べられています。又、墓地使用契約は双務契約である為、使用者に一方的に義務を課すような規定は好ましくないとされています。

第2条 墓地の使用

(墓地使用)
第2条 使用者は、次に掲げる墓地の区画(以下「墓所」という。)を契約成立後〇年間〔第8条又は第9条の規定により契約が解除されない限り、継続して〕使用する権利を有する。

使用墓所

2 使用者は、経営者に届け出て、墓所内に使用者の親族及び縁故者の焼骨を埋蔵することができる。
3 使用者は、墳墓の設置、焼骨の埋蔵その他墓地本来の使用目的以外の目的のために墓所を使用してはならない。
4 使用者は、経営者の承諾を得ずに墓所の使用する権利を他人に譲渡し、又は他人に当該墓所を使用させてはならない。

解説)使用者義務のみの記載は契約として不均衡である為、有する権利も使用者保護の観点から規定を設けるべきであると述べられています。又、墓地使用期間については「永代」とされている場合が多々あるが、いかなる場合も永代に使用できるものではなく、管理料の不払い等が発生した場合、契約の解除が想定される為、契約が解除されない限り継続してと記載されています。

 

〇年と具体的な有効期間を設け契約更新を行う制度は、無縁化した墓地の円滑な整理等を考慮した場合、今後の墓地契約の1つの形としてなりうるものとも記載されています。

第3条 使用料

(使用料)
第3条 使用者は、経営者が定める期日までに使用料〇円を支払わなければならない。

解説)当該指針では、使用料と管理料を個別に規定し、墓地使用料の対価であることを明確に記載する事で、一括払いと比べ不測の事態に対処しやすいと述べられています。(使用料不払いは経営者による解除要件 後記第9条第1項に記載)

第4条 墓所の管理

(墓所の管理)
第4条 墓所の清掃、除草等については、当該墓所の使用者がその責任を負う。
2 墓所の環境整備その他の管理(前項にきてするものを除く。)については、経営者がその責任を負う。

解説)墓地の管理について責任を明確に記載。墓所の清掃等以外の責任は経営者が負うこととし、後記記載の管理用の根拠となるものである述べられています。又、本約款では地震・火災等の不可抗力に対する経営者の免責を記載していないが、定めておくことも考えられる。と述べられています。近年、自然災害が多々発生していますので約款作成の際には、自然災害に関する免責事項は必須と思われます。

第5条 管理料

(管理料)
第5条 経営者は、前条第2項に要する費用に充てるため、別に定めるところにより使用者に対して毎年管理料を請求するものとし、使用者はこれを支払わなければならない。
2 経営者は物価の変動等により、当該時点における管理料によっては前項に規定する費用を賄うことができなくなったとき、又はその確実な見込が生じたときは、必要かつ相当と認められる範囲内において、管理料を改定することができる。この場合において、経営者は改定後の額及び改定の具体的な理由を明記して、使用者に対し、事前に書面により通知するものとする。

解説)管理料の使途を明確にしないまま使用者に支払義務を課すことは妥当ではなく、何のために管理料を取るのか明確にする必要があると述べらています。又、管理用の将来的な改定等を見込み別に定めるとされています。尚、管理料の一括払いは柔軟な対応が困難であることから望ましくないとされ、使用者の所在を把握する上でも毎年の管理料を請求する方式を規定したと述べられています。

 

第2項に管理料の改定については、物価変動した場合、どの様な場合でも管理料を値上げでき、かつその範囲が不明確な場合、使用者の不利益になる為、上記等の制限を設けることが望ましいとされています。

第6条 契約の更新

(契約の更新)
第6条 墓所を使用する権利を有する期間を経過した後も継続して墓所を使用しようとする者は、当該期間が経過する〇年前から、経営者に対して契約更新の申込をすることでができる。
2 前項の申込があった場合おいて、前条第1項に規定する管理料の支払義務が履行されている場合には、経営者は前項の申込を承諾しなければならない。

解説)上記は墓地使用期間が定められている場合の規定になります。(契約が解除されない限り使用できるとした場合は不要。)尚、墓地使用契約の有期限更新制は、これからの墓地のあり方の1つのモデルとして本契約約款に提示したと述べられています。

第7条 使用者の地位の承継

(使用者の地位の承継)
第7条 使用者の死亡により、使用者の祭祀承継者がその地位を承継して墓所の使用を継続する場合には、当該祭祀承継者は、すみやかに別記様式による地位承継届出書に住民票の写しを添えて経営者に届出を行う者とする。
2 使用者の祭祀承継者が墓所の使用を継続しない場合には、書面をもって経営者にその旨を届け出るものとする。

解説)墓地使用に関する債権債務を全て包括的に承継する者であるから、契約当事者たる「使用者の地位」を承継すると規定されています。墓地使用権については、祭祀承継者に承継されるものであるから経営者の承認等は定めていないと述べられています。

 

一方、誰が承継して墓地を使用するのか把握する必要がある為、承継者が住民票の写しを添えて必要書類を提出することを明確に義務付けています。又、祭祀承継者が墓地を継続して使用しない場合、書面による意思表示を求めるとしています。

第8条 使用者による契約解除

(使用者による契約解除)
第8条 使用者は、書面をもっていつでも契約を解除することができる。
2 前項の場合においては、使用者は既に支払った使用料及び管理料の返還を請求することはできない。ただし、墓所に墓石の設置等を行っておらず、かつ焼骨を埋葬していない場合において、使用者が既に使用料を納付しているときは、契約成立後〇日以内に契約を解除する場合に限り、経営者は、当該使用料の〇割に相当する額を返還するものとする。
3 第1項の場合において、契約解除の日の属する年「度」の管理料を納付していないときは、使用者は当該管理料を支払わなければならない。

解説)墓地使用に関する契約である為、使用者の都合等により、いつでも契約が解除できることとされています。尚、契約の終了につながる重要事項であるため後でトラブルが起こることのないように書面による意思表示を求めることが適当であると述べられています。

第9条 経営者により契約の解除

(経営者により契約の解除)
第9条 経営者は、使用者が使用料を所定の期日までに支払わなかったときは、書面をもって、契約を解除できる。
2 前項に規定する場合のほか、使用者が次の各号の一に該当する場合には、経営者は相当の期間を定めて債務の履行を催告し、その履行がないときには、書面をもって契約を解除することができる。
一 〇年間管理料を支払わなかった場合
二 第2条第3項に規定する使用の目的に違反して墓所を使用した場合
三 第2条第4項の規定に違反して墓所を使用する権利を他人に譲渡し、又は他人に当該墓所を使用させた場合。

解説)使用料の不払いは、重大な契約違反であることから催告を規定せずに書面をもって解除することが出来るとされています。一方、第2項については、重大な債務不履行とはいえないことから催告し履行を促すものとしています。ちなみに管理料の不払い期間については、一概に決めることは難しいが1年では短すぎると思われると述べられています。

第10条 契約の終了及びこれに伴う措置

(契約の終了及びこれに伴う措置)
第10条 契約は、次に掲げる場合に終了する。
一 墓所を使用する権利を有する期間が経過した後、第6条第一項に規定する契約更新の申込がなされなかったとき
二 第7条第2項の届出があったとき
三 前2条の規定により契約が解除されたとき
2 契約が終了したときは、使用者であった者又はその祭祀承継者(次項及び第4項において「元使用者等」という。)は、速やかに墓所内に設置された墓石等を撤去し、墓所内に埋蔵された焼骨を引き取るものとする。
3 本使用者等が義務を履行しない場合において、契約終了後に〇年を経過した場合には、経営者は、墓石等を墓地内の所定の場所に移動し、及び法令の規定による改葬手続を経て埋蔵された焼骨を墓地内の合葬墓又は納骨堂に移すことができる。
4 前項の場合においては、経営者は実費を元使用者等に請求することができる。

解説)上記は、どのような場合に契約が終了するか、契約が終了した場合の措置について規定されています。使用者・承継者の義務を定めるとともに、義務がが履行されない場合についても規定されています。尚、改葬の際には、法令に定められた手続きを得なければならないことは当然であるが、確認的に規定したと述べられています。

署名・捺印

以上につき、使用者、経営者双方合意の上、墓地使用契約書を締結したので、これを証するため本書2通を作成し、署名捺印の上、各自1通を保管する。
【使用者】 
氏名        ㊞
住所
電話番号
【経営者】 財団法人 〇〇〇〇
理事長       ㊞
所在地
電話番号

解説)契約書であることから、当事者双方が署名捺印し各自1通保管することになります。

 

まとめ

墓地の永代使用は双務契約であると考えられ、契約の範囲や具体的な内容、契約の解除等について明確化しておくことは、不要なトラブルを避ける意味でも重要だと思います。寺院により詳細な墓地使用規則等が定められている場合もありますが、規則等が曖昧で書面化もされていない寺院も多々あります。

 

現在、宗教的な関心が希薄になっている方も多く、その中で明確な規則等が定められていない。又は、書面化した規則等を渡していない。等の場合、檀家としてのルール(義務)も不明確になっています。そのような状況で、ご住職が口頭で一方的に伝えるだけでは、まさにトラブルのもとと言えます。

 

今後も安定した運営・管理を行うには、重要なことは書面化しておくべきだと思います。

 

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