
「名義貸し」という言葉は聞くけれど、具体的にどんな行為が問題になるのかご存知ですか? 近年、宗教法人の名義貸しが、不正な霊園開発やトラブルの原因として問題になるケースが増えています。
しかし、名義貸しを禁止する直接的な条文は存在しないため、その定義や法的リスクが不明確なままで、安易に事業提携を進めてしまうと、多額の負債を抱え、最悪の場合、法人破産に繋がるリスクも伴います。
この記事では、宗教法人の名義貸し問題について、厚生省の通知や運営ガイドブックをもとに、その定義、問題点、そして法的リスクを分かりやすく解説します。
名義貸しについては、「墓地経営・管理の指針等について」平成12年12月6日 厚生省生活衛生局長から各都道府県知事等に宛てた通知の中で述べられています。その解説として、「特に宗教法人の墓地経営を許可する場合には、宗教法人の名を借りて実質的に経営の実権を営利企業が握るいわゆる『名義貸し』の防止に留意することが必要である」と述べられています。
何をもって具体的に「名義貸し」というのかは難しいとされていますが、問題となる事例としては例えば次のような場合が考えられます。
墓地の経営主体は、市町村等の地方公共団体が原則であり、これが難しい場合でも、宗教法人又は公益法人に限定されています。これは、公共性の高い墓地事業が、営利目的の企業によって不当に運営されることを防ぐためです。
経営主体として、宗教法人が行っているならば、墓地使用料や墓地管理費等の収益は、その寺院の収益になるものであり、使用許可証や領収書等は寺院名にて発行されるものと考えられますので、全て石材店等に一任している場合は「名義貸し」と判断される可能性高くなると思われます。
「墓地経営・管理の指針等について」の通知の中では、管理業の委託は可能とされています。しかし、「管理業務を委託している場合は、その方法及び範囲が適切であること」と述べられ、その解説として下記の様に述べられています。
管理業務を外部委託している場合に、墓所の販売行為が受託者の名前によって行われているなど実質的な権限が経営者にないような状態(いわゆる名義貸しのような状態)になっていないか確認する必要がある。
そもそも外部委託をする場合には、委託契約書の写しを提出させ、いかなる内容についてどこに委託するのか明確にして、監督庁に事前に報告させることが望ましい。
※ここでも、経営主体である寺院等が自ら責任を持って管理業務を委託する必要があり、受託者(石材店等)に一任し、全く関与していない状況では、「名義貸し」に該当する可能性があると考えられます。又、上記通知は行政間による通知になりますので、今後このような確認が行政により行われていくことと思われます。
文化庁の「宗教法人のための運営ガイドブック」でも、他人任せの霊園事業の「名義貸し」は以下の通知により禁止されている行為です。安易な事業参加は、多額の負債を抱え込み宗教法人の破産につながることもあります。
【「宗教法人のための運営ガイドブック」文化庁宗務課 令和5年11月】
本来、宗教法人の事業は、その公益的性格からいって、それにふさわしい内容のものであり、適正な規模でなければなりません。もちろん、宗教法人が主体的に行う必要があります。
例1のような他人任せの霊園事業の「名義貸し」は、以下の通知※)により禁止されている行為です。甘言に誘われての事業への安易な参加により多額の負債を抱え込み宗教法人の破産につながることもあります。大船に乗ったつもりがドロ船に変わらぬよう気をつけましょう。
※)通知は当ページにて記載している「墓地経営・管理の指針等について」の通知になります。
「墓地埋葬等に関する法律」12条から18条に管理者の義務等が定められています。これらの責任は最終的には、経営主体である宗教法人にあるものと思われます。従って使用者とのトラブルが発生した場合には寺院等も責任を負うことになりますのでご注意下さい。
最後に、ここまでご覧頂きまして有難うございました。宗教法人の名義貸しは、法律上の直接的な禁止条文がないため判断が難しいですが、行政の通達では明確に問題視されています。
安易な事業提携は、多額の負債を抱えるリスクや、使用者とのトラブルに発展する可能性が高いため、慎重な検討が必要です。事業提携を行う場合は、後々の維持管理費等をよく計算し、最終的に赤字が発生しないか考慮した上で、行政機関と十分な打合せを行うことをお勧めします。
当事務所は、宗教法人様の事業提携に関するサポートを行っておりますので、ご不明な点等がありましたら、お気軽にご相談下さい。
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大塚法務行政書士事務所 行政書士 大塚博幸
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