宗教法人の《任意解散手続》について解説いたします。|大塚法務行政書士事務所(東京都)
宗教法人は法で定めるところにより任意に解散することが出来ます。実際に解散をする場合には、規則に定める手続、信者その他の利害関係人に対する公告、所轄庁に対する解散認証申請等の手続きを行う必要があります。
行政書士 大塚博幸
行政書士 大塚博幸

宗教法人の《任意解散手続》について解説

合掌する住職
・宗教法人法43条に「宗教法人は、任意に解散することができる。」と明記されております。又、同法44条に解散しようとするときは、既定の手続きを行い所轄庁の認証を受けなければならないとも明記されております。

 

ここでは、宗教法人の解散の流れ・手続等について具体的に解説していきたいと思います。

 

参考に宗教法人法の根拠条文を下記に掲載いたします。

・宗教法人法
(任意解散の手続)
第四十四条 宗教法人は、前条第一項の規定による解散をしようとするときは、第二項及び第三項の規定による手続をした後、その解散について所轄庁の認証を受けなければならない。

 

2 宗教法人は、前条第一項の規定による解散をしようとするときは、規則で定めるところ(規則に別段の定がないときは、第十九条の規定)による外、信者その他の利害関係人に対し、解散に意見があればその公告の日から二月を下らない一定の期間内にこれを申し述べるべき旨を公告しなければならない。

 

3 宗教法人は、信者その他の利害関係人が前項の期間内にその意見を申し述べたときは、その意見を十分に考慮して、その解散の手続を進めるかどうかについて再検討しなければならない。

(事務の決定)
第十九条 規則に別段の定がなければ、宗教法人の事務は、責任役員の定数の過半数で決し、その責任役員の議決権は、各々平等とする。

任意解散の流れ及び手続

 

・任意解散の開始から完了までの具体的な流れ・手続について下記に解説いたします。

1.解散の決定・規則で定める手続

説明する行政書士
任意解散を決定した場合、最初に規則を確認し、その規則に定められている決議等行う事になります。

(1)責任役員会の議決

定められている規則に従い解散の決議を行います。一般的には、責任役員の全員、又は2/3以上の賛成等、通常の決議より重い要件が科されています。規則に定めがない場合は、法19条の定めにより責任役員定数の過半数で決することになります。

関連議決事項
 

① 清算人の選任
解散に伴い代表役員(代務者)は、規則に定めがある場合を除き退任することになり、その後の業務は清算人が行うことになりますので、ここで清算人の選任を行います。

 

清算人の選任については、ⅰ)規則に定め。ⅱ)代表役員(代務者)以外ものを選任する場合は、その者。ⅲ)左記によらない場合は、代表役員(代務者)が精算人になります。

 

② 残余財産の処分
残余財産の処分について、規則に定めがある場合は、その規則に従い、規則に定めがない場合は、その財産の帰属先を決定しておく必要があります。尚、宗教法人法50条に残余財産の処分について明記されていますので下記に掲載いたします。

第五十条 解散した宗教法人の残余財産の処分は、合併及び破産手続開始の決定による解散の場合を除くほか、規則で定めるところによる。
2 前項の場合において、規則にその定がないときは、他の宗教団体又は公益事業のためにその財産を処分することができる。
3 前二項の規定により処分されない財産は、国庫に帰属する。

(2)その他機関の議決・同意

規則の定めにより、解散について総代会等のその他機関の議決・同意が必要な場合には、その同意又は議決を得ておく必要があります。規則により包括宗教法人の承認が必要な場合には、その承認も必要となります。

2.信者その他の利害関係人に対する公告

掲示板
信者その他の利害関係人に対し、任意解散に対する意見を求める為に規則で定める方法により公告を行います。この公告には、任意解散について意見があれば2ヶ月以上の期間内に申し述べるよう公告します。公告の方法は、事務所の掲示板への掲載、機関紙の掲載等、規則の定めによります。

 

信者その他の利害関係人から任意解散に対する意見が述べられた時には、その意見を十分考慮し、解散手続きを進めるかどうか?再検討する必要があります。

 

例)解散公告:「不活動宗教法人マニュアル(改訂文化庁宗務課」参照

解散公告
当法人は、〇〇年〇〇月〇〇日 責任役員会決議により解散したので、当法人に債権を有する者は、本公告掲載の翌日から二箇月以内にお申し出下さい。右期間内にお申し出がないときは清算から除斥します。

〇〇年〇〇月〇〇日

〇〇県〇〇市〇〇町〇〇番地

宗教法人 〇〇〇〇

清算人 〇〇 〇〇

3.解散認証申請

説明する行政書士
上記、信者その他の利害関係人に対する意見を申し述べる期間の経過後、所轄庁に解散認証申請を行います。

 

提出する書類は下記等になります。
①解散認証申請書
②解散の決定について規則で定める手続きを経たことを証する書面
(責任役員会の議事録、包括宗教法人の承認証等)
③公告したことを証する書面
(公告証明書、公告の写真等)
④解散理由書
(解散至った経緯・理由等を簡潔に記載) 

4.解散認証書の交付

所轄庁に対し適正な申請が行われた場合、所轄庁は認証後に「解散認証書」及び「その謄本」を交付します。尚、解散の効力は、認証書の交付により発生することになります。

5.解散及び清算人就任登記

清算人は認証書の交付を受けた日から2週間以内に管轄の法務局に解散登記及び清算人の就任登記を申請する必要があります。その際に清算人の印鑑届も行います。

 

提出する書類は下記等になります。
申請書
解散認証書(謄本)
解散・清算人の決定について規則で定める手続きを経たことを証する書面
(責任役員会の議事録、包括宗教法人の承認証等)
規則

6.解散及び清算人の就任届

上記登記の完了後、所轄庁に解散及び清算人就任届を提出します。(解散及び清算人就任の登記事項証明書を添付)

7.清算手続き

清算人
清算人は下記の清算事務等を行う事になります。

(1)債権申出の公告・催告

清算人は就任日から2か月以内に少なくとも3回に渡り、債権者に対して債権の申し出をすべき旨の官報公告を行います。又、知れている債権者がいる場合には、その債権者に個別に催告する必要があります。

(2)清算事務

清算人は下記の精算事務を行います。

1)現務の結了

解散前から継続している事務、解散後の事務を整理し終了させます。尚、宗教法人が行っていた墓地等の経営を廃止する場合には、都道府県知事等の許可を受ける必要があります。(改葬を行う場合には市区町村の許可)

 

2)債権の取立て及び債務の弁済

債権者に対する債務の弁済は、清算人の重要な職務であることから未回収債権がある場合には取立てを行う必要があります。尚、清算人は清算中に法人の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになった場合、直ちに破産手続開始の申立てをし、その旨を官報公告する必要があります。

 

3)残余財産の処分・引渡し

債務債権の整理後、清算事務所費を控除し後の残余財産を処分し帰属者に引き渡すことにより、法人の権利義務は消滅し法人格も無くなることになります。

(3)清算結了登記

清算結了日から2週間以内に管轄の法務局に清算結了登記を申請します。(登記簿閉鎖)

(4)清算結了届

上記登記完了後、所轄庁に清算結了届を届出ます。(清算結了の登記事項証明書添付)

 

以上、任意解散の一連の流れ及びその手続になります。

8.まとめ

パソコンを打つ行政書士
ここまで、ご覧頂きまして有難うございました。宗教法人の任意解散の流れ・手続等についてまとめさせて頂きました。実際に任意解散を行う場合には、所轄庁との打合せを含め、段階ごとに確認した上で、慎重に進める必要があるかと思います。

 

尚、任意解散以外の方法として吸収合併等も一度ご検討されては如何でしょうか?
詳しくは、こちらから→宗教法人の《合併》手順・手続について解説。

 

当事務所では、宗教法人様に対する法務サポートを行っておりますので、ご質問等ありましたら お気軽にご相談下さい。

 

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