【宗教法人】公益事業・収益事業の定義と運営|大塚法務行政書士事務所(東京都)

【宗教法人】公益事業・収益事業の定義と運営|大塚法務行政書士事務所(東京都)

宗教法人が行える「公益事業」と「収益事業」の違いとは?この記事では、宗教法人法や国税庁の資料に基づき、各事業の定義、事業を始める際の手続き、罰則や備付義務を解説。寺院運営の専門家が、事業運営の注意点を分かりやすく説明します。
行政書士 大塚博幸
行政書士 大塚博幸

公益事業・公益事業以外の事業とは?

お守り
「お寺で駐車場経営を始めたいが、どんな手続きが必要なのか?」「収益事業って、法人税の対象になるの?」そうお考えではありませんか?


宗教法人は、本来の宗教活動に加え、公益事業や収益事業を行うことができます。しかし、これらの事業を始めるには、法律上の明確な定義と、それに沿った適切な手続きが不可欠です。


この記事では、宗教法人法第6条を基に、公益事業と収益事業の定義、事業を始める際の手順や注意点について、専門家が分かりやすく解説します。


1. 宗教法人の公益事業・収益事業(公益事業以外の事業)とは

(1)宗教法人法で定められた事業の定義

宗教法人は、宗教法人法第6条により「公益事業」および「公益事業以外の事業(その目的に反しない限り)」を行うことができると定められています。

公益事業

公共の利益を図る目的で営まれ、かつ営利を目的としない、教育、学術、社会福祉等に関する事業を指します。ただし、関係法令に準拠して行う必要があります。

公益事業以外の事業

本来の宗教活動や公益事業を推進するために必要な費用を補う目的で行われる事業であり、主に「収益事業」がこれに該当します。


(公益事業その他の事業)
第六条 宗教法人は、公益事業を行うことができる。
2宗教法人は、その目的に反しない限り、公益事業以外の事業を行うことができる。この場合において、収益を生じたときは、これを当該宗教法人、当該宗教法人を包括する宗教団体又は当該宗教法人が援助する宗教法人若しくは公益事業のために使用しなければならない。


ここで、公益事業と公益事業以外の事業とは、どの様なものを指すのか?を理解する必要がありますが、「宗教法人のための運営ガイドブック(文化庁宗務課 令和5年11月)」では、下記の様に述べられています。

●公益事業
公共の利益を図る目的で営まれる事業であり、かつ営利を目的としない、たとえば教育、学術、社会福祉等に関する事業。宗教法人は公益事業を行うことができるが、実際にはどのような公益事業も自由に行えるわけではなく、その事業の関係法令に準拠して行うことが必要。

●公益事業以外の事業
本来の宗教活動や公益事業を推進するために必要な費用の補填をするために行われる事業で、宗教法人の主たる目的に反しない限り行うことができる。


(2)収益事業に該当する34の事業(国税庁の定義)

住職
国税庁の「宗教法人の税務」によると、収益事業として以下の34種類が挙げられています。これらの事業を継続して行う場合は、法人税を納める義務が生じます。

①物品販売業、②不動産販売業、③金銭貸付業、④物品貸付業、⑤不動産貸付業、⑥製造業、⑦通信業・放送業、⑧運送業・運送取扱業、⑨倉庫業、⑩請負業(事務処理の委託を受ける業を含む)

 

⑪印刷業、⑫出版業、⑬写真業、⑭席貸業、⑮旅館業、⑯料理店業その他の飲食店業、⑰周旋業、⑱代理業、⑲仲立業、⑳問屋業

 

㉑鉱業、㉒土石採取業、㉓浴場業、㉔理容業、㉕美容業、㉖興行業、㉗遊技所業、㉘遊覧所業、㉙医療保健業、㉚技芸教授業

 

㉛駐車場業、㉜信用保証業、㉝無体財産権の提供業、㉞労働者派遣業

上記事業を事業場を設け継続して行う場合は法人税を納める義務があり、これらに関連する付随行為も収益事業に含まれると述べられています。尚、公益事業であっても収益事業に該当する場合等がありますので詳細は、管轄の税務署等にご確認下さい。

2. 新たに事業を行う場合の手続きと注意点

(1)規則変更認証申請が必要な場合

新たに事業を行う場合には、その種類、管理運営、収益処分等に関する事項を規則に記載し、所轄庁の認証を受ける必要があります。

宗教法人法
第十二条 宗教法人を設立しようとする者は、左に掲げる事項を記載した規則を作成し、その規則について所轄庁の認証を受けなければならない。
(省略)
七 第六条の規定による事業を行う場合には、その種類及び管理運営(同条第二項の規定による事業を行う場合には、収益処分の方法を含む。)に関する事項
(省略)

(2)規則変更手続きの流れ

→ 規則変更に関する手続の詳細は、【宗教法人の規則変更】手順・手続きを解説 をご覧ください。

ここでは、事業開始に伴う規則変更の一般的な流れを説明します。

  1. 規則変更に関する手続(所轄庁との打合せ含む)
  2. 規則変更認証申請(所轄庁)
  3. 認証書交付(所轄庁)
  4. 変更の登記(所轄の法務局)
  5. 変更の届出(所轄庁)

3. 事業に関する書類の備え付け義務と罰則

(1)「事業に関する書類」の備え付け義務

宗教法人は、公益事業または収益事業を行う場合、各事業ごとに事業の状況、収支、その他の内容を表す「事業に関する書類」を作成し、事務所に備え付けておくことが法律で義務付けられています(宗教法人法第25条)。この義務に違反した場合、10万円以下の過料に処される可能性があります。

(2)収支計算書の作成義務

収支計算書の作成が免除されている宗教法人(一会計年度の収入額8千万円以内)であっても、収益事業を行っている場合は、収支計算書を作成する必要があります(宗教法人法附則23条)。


宗教法人法
(財産目録等の作成、備付け、閲覧及び提出)
第二十五条 宗教法人は、その設立(合併に因る設立を含む。)の時に財産目録を、毎会計年度終了後三月以内に財産目録及び収支計算書を作成しなければならない。
2宗教法人の事務所には、常に次に掲げる書類及び帳簿を備えなければならない。
(省略)
三 財産目録及び収支計算書並びに貸借対照表を作成している場合には貸借対照表
(省略)
六 第六条の規定による事業を行う場合には、その事業に関する書
(※六条の規定は、公益事業、公益事業以外の事業(収益事業)。)


3宗教法人は、信者その他の利害関係人であつて前項の規定により当該宗教法人の事務所に備えられた同項各号に掲げる書類又は帳簿を閲覧することについて正当な利益があり、かつ、その閲覧の請求が不当な目的によるものでないと認められる者から請求があつたときは、これを閲覧させなければならない。
4宗教法人は、毎会計年度終了後四月以内に、第二項の規定により当該宗教法人の事務所に備えられた同項第二号から第四号まで及び第六号に掲げる書類の写しを所轄庁に提出しなければならない。
(省略)

※収益事業を行っている場合、所轄庁へ提出する書類は、①役員名簿、②財産目録、③収支計算書、④貸借対照表(作成している場合)、⑤事業に関する書類等になります。(詳細は所轄庁にご確認下さい。)

まとめ

説明する行政書士
宗教法人の公益事業・収益事業については、「宗教法人法」や文化庁の「宗教法人のための運営ガイドブック」をもとに解説しました。ここでは、行政上の手続きを主にまとめていますが、税に関することは、国税庁のホームページ等にてご確認頂ければと思います。


事業の適正な運営は、法人の信頼を守る上で不可欠です。


宗教法人の事業についても、各事業の種類ごとに「事業に関する書類」を作成し備え付けることが義務付けられておりますので、後々問題にならないようにきちんと整備しておくことが大切です。また、規則で定められていないことを行う場合は、規則変更に関する手続き・登記等も必要になりますので、事業等を行う場合には、最初に貴寺院等の規則がどのようになっているか、ご確認下さい。


当事務所は、宗教法人の事業運営に関するサポートを行っております。もし、ご不明な点がありましたら、お気軽にご相談下さい。

当事務所の 宗教法人法務(運営・管理)サポート のページでは、規則変更や合併など、各種手続きについて詳しく解説していますので、併せてご覧ください。


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【記事作成者】

大塚法務行政書士事務所 行政書士 大塚博幸

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