宗教法人の「公益事業」・「収益事業」について解説します。|大塚法務行政書士事務所(東京都)
宗教法人法6条において宗教法人は、「公益事業」及び公益事業以外の事業(目的に反しない限り)を行う事が出来ると定められています。公益事業・収益事業とは、どの様なものを指すのか?事業を新たに行う場合には、どの様な手続が必要か?など解説させて頂きます。
行政書士 大塚博幸
行政書士 大塚博幸

宗教法人の「公益事業」・「収益事業」について解説

お守り
・宗教法人における公益事業と公益事業以外の事業について、宗教法人法6条では、下記の様に定められています。

(公益事業その他の事業)
第六条 宗教法人は、公益事業を行うことができる。
2宗教法人は、その目的に反しない限り、公益事業以外の事業を行うことができる。この場合において、収益を生じたときは、これを当該宗教法人、当該宗教法人を包括する宗教団体又は当該宗教法人が援助する宗教法人若しくは公益事業のために使用しなければならない。

ここで、公益事業と公益事業以外の事業とは、どの様なものを指すのか?を理解する必要がありますが、「宗教法人のための運営ガイドブック(文化庁宗務課 令和5年11月)」では、下記の様に述べられています。

●公益事業
公共の利益を図る目的で営まれる事業であり、かつ営利を目的としない、たとえば教育、学術、社会福祉等に関する事業。宗教法人は公益事業を行うことができるが、実際にはどのような公益事業も自由に行えるわけではなく、その事業の関係法令に準拠して行うことが必要。

●公益事業以外の事業
本来の宗教活動や公益事業を推進するために必要な費用の補填をするために行われる事業で、宗教法人の主たる目的に反しない限り行うことができる。

 

住職
公益事業以外の事業とは、主に収益(営利を目的とする)事業と考えられ「宗教法人の税務(国税庁 令和6年版)」では、収益事業として下記の34種類が挙げられています。

①物品販売業、②不動産販売業、③金銭貸付業、④物品貸付業、⑤不動産貸付業、⑥製造業、⑦通信業・放送業、⑧運送業・運送取扱業、⑨倉庫業、⑩請負業(事務処理の委託を受ける業を含む)

 

⑪印刷業、⑫出版業、⑬写真業、⑭席貸業、⑮旅館業、⑯料理店業その他の飲食店業、⑰周旋業、⑱代理業、⑲仲立業、⑳問屋業

 

㉑鉱業、㉒土石採取業、㉓浴場業、㉔理容業、㉕美容業、㉖興行業、㉗遊技所業、㉘遊覧所業、㉙医療保健業、㉚技芸教授業

 

㉛駐車場業、㉜信用保証業、㉝無体財産権の提供業、㉞労働者派遣業

上記事業を事業場を設け継続して行う場合は法人税を納める義務があり、これらに関連する付随行為も収益事業に含まれると述べられています。尚、公益事業であっても収益事業に該当する場合等がありますので詳細は、管轄の税務署等にご確認下さい。

新たに収益事業を行う場合は?

新たに事業を行う場合には、その種類、管理運営、収益処分等に関する事項を規則規則に記載し、所轄庁の認証を受ける必要があります。

宗教法人法
第十二条 宗教法人を設立しようとする者は、左に掲げる事項を記載した規則を作成し、その規則について所轄庁の認証を受けなければならない。
(省略)
七 第六条の規定による事業を行う場合には、その種類及び管理運営(同条第二項の規定による事業を行う場合には、収益処分の方法を含む。)に関する事項
(省略)

上記、規則変更に関する手続の詳細につきましては、こちらのページをご覧ください。
宗教法人の《規則変更》手順・手続について解説します。

 

新たに収益事業を行う場合の流れ

  1. 規則変更に関する手続(所轄庁との打合せ含む)
  2. 規則変更認証申請(所轄庁)
  3. 認証書交付(所轄庁)
  4. 変更の登記(所轄の法務局)
  5. 変更の届出(所轄庁)

事業に関する書類について

事業を行う場合には、各事業ごとに、事業の状況、事業に関する収支、その他の事業内容や経営の実情等を表す「事業に関する書類」を作成し、事務所に備え付けておく必要があります。(罰則10万円以下の過料)

 

尚、収支計算書の作成が免除(一会計年度の収入額8千万円以内)されている宗教法人においても、公益事業以外の事業を行っている場合は、収支計算書を作成する必要があります。(宗附則23条)

宗教法人法
(財産目録等の作成、備付け、閲覧及び提出)
第二十五条 宗教法人は、その設立(合併に因る設立を含む。)の時に財産目録を、毎会計年度終了後三月以内に財産目録及び収支計算書を作成しなければならない。
2宗教法人の事務所には、常に次に掲げる書類及び帳簿を備えなければならない。
(省略)
三 財産目録及び収支計算書並びに貸借対照表を作成している場合には貸借対照表
(省略)
六 第六条の規定による事業を行う場合には、その事業に関する書
(※六条の規定は、公益事業、公益事業以外の事業(収益事業)。)

 

3宗教法人は、信者その他の利害関係人であつて前項の規定により当該宗教法人の事務所に備えられた同項各号に掲げる書類又は帳簿を閲覧することについて正当な利益があり、かつ、その閲覧の請求が不当な目的によるものでないと認められる者から請求があつたときは、これを閲覧させなければならない。
4宗教法人は、毎会計年度終了後四月以内に、第二項の規定により当該宗教法人の事務所に備えられた同項第二号から第四号まで及び第六号に掲げる書類の写しを所轄庁に提出しなければならない。
(省略)

※収益事業を行っている場合、所轄庁へ提出する書類は、①役員名簿、②財産目録、③収支計算書、④貸借対照表(作成している場合)、⑤事業に関する書類等になります。(詳細は所轄庁にご確認下さい。)

まとめ

説明する行政書士
宗教法人の公益事業、収益事業について「宗教法人法」及び文化庁の「宗教法人のための運営ガイドブック」をもとにまとめさせて頂きました。ここでは、行政上の手続きを主にまとめておりますが、税に関することは、国税庁のホームページ等にてご確認頂ければと思います。

 

先日ニュースで、宗教法人の源泉徴収漏れで追徴課税された件が取り上げられていました。宗教法人と住職等の個人の資産が一緒の口座で管理されていること等により、この様な問題になったと思われます。

 

宗教法人の事業についても、公営事業、公益事業以外の事業について各事業の種類ごとに「事業に関する書類」を作成し備付けることが義務付けられておりますので、後々問題にならない様にきちんと整備しておく事が大切です。

 

又、規則で定められていないことを行う場合には、規則変更に関する手続・登記等も必要になりますので、事業等を行う場合には、最初に貴寺院等の規則がどの様になっているか?ご確認下さい。

 

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