指定寄付金制度(宗教法人)の申請について解説します。|大塚法務行政書士事務所(東京都)
令和6年の能登半島地震により滅失・損壊した公益的な施設等の復旧の為、宗教法人等が募集する寄付金について一定の条件のもと「指定寄付金」として募集することが可能になりました。この場合、寄付者は税制上の優遇措置を受けることが出来ます。
行政書士 大塚博幸
行政書士 大塚博幸

指定寄付金制度(宗教法人)の申請について解説

倒壊した墓
・「指定寄付金」とは、宗教法人等の公益事業を行う法人に対する寄付金で、公益の増進に寄与し緊急を要する特定の事業として財務大臣の指定を受けたものを言います。

 

通常の場合、指定寄付金の対象となるものは、国宝又は重要文化財保護の為の修理・防災施設設置費用等になります。(文化庁HP参照)

 

※令和6年能登半島地震により滅失・損壊した宗教法人の施設等も特例措置として指定寄付金の対象となりました。

 

これにより一定の要件を満たすものとして所轄庁の確認を受けたものは、指定寄付金となり寄付者が税制上の優遇措置を受けることが出来ますので、一般的な募集に比べより寄付が集め易くなります。

《 寄付者に対する優遇措置 》
寄付者に対する優遇措置は下記の様になります。(文化庁HPより抜粋)

 

・個人の場合
所得金額の40%又は寄附金額のいずれか少ない方の金額から2千円を控除した金額を所得金額から控除できます。

 

・法人の場合
寄附金の全額を損金の額に算入できます。

※令和6年 能登半島地震の指定寄付金制度の申請期限は、令和9年12月31日までになります。

令和6年 能登半島地震における指定寄付金制度

ここでは令和6年 能登半島地震における指定寄付金制度の申請等について具体的に解説いたします。

1.指定寄付制度申請の対象者

住職(男性)
指定寄付金制度の申請を行える方は、能登半島地震により被災した建物等を所有する下記の宗教法人になります。

  1. 単立宗教法人
  2. 包括宗教法人
  3. 被包括宗教法人

自ら所轄庁に申請又は包括宗教法人にて申請する方法があります。(併用不可)
※申請先は文部科学大臣、又は、都道府県知事なります。

2.対象施設等

指定寄付金として募集対象になるものは、下記の建物・構築物等になります。

Ⅰ 宗教法人が事業の用に供していた(個人所有は不可)建物(その附属設備を含む。)及び構築物並びにこれらの敷地の用に供される土地のうち、以下の(a)、(b)の要件を全て満たすもの 。

 

Ⅱ 宗教法人が事業の用に供していたⅠ以外の固定資産(以下「その他固定資産」という。)で、Ⅰに掲げる固定資産が能登半島地震により滅失又は損壊をしたことに伴って滅失又は損壊をしたもののうち、以下の(a)、(b)の要件を全て満たすもの 。

 

(a) 宗教法人が専ら自己の宗教活動又は公益事業の用に供していた建物等であること
(b) 能登半島地震により建物等が滅失又は損壊をし、補修なしには建物等として本来の機能を果たさない、ないしはその利用の継続が困難であること

具体的には、宗教活動・公益事業に使用してた建物等であり、震災の影響により滅失・損壊し補修をしなければ使用できない状況等であること。(※収益事業に使用していた建物は対象外)

 

(1)建物・構築物の具体例

仏教系

(建物) 本堂、客殿、庫裏、観音堂、薬師堂、僧堂、檀信徒会館、仏具庫、内陣、堂内荘厳、納骨堂、位牌堂、書院、教職舎、持仏堂、稲荷堂、土蔵、経蔵等。
(構築物) 鐘楼、山門、参道、土塀、太鼓楼、灯籠、地蔵、祠、石碑、仁王像等。

神道系

(建物)社殿、本殿、拝殿、祝詞殿、幣殿、覆殿、境内神社社殿、祖霊社社殿、神具庫、祭器庫、社務所、随神舎、参集殿、宝物殿、神楽殿、神社会館、祈祷殿、神輿庫、授与所、御旅所、参籠所等。
(構築物)手水舎、絵馬堂、鳥居、玉垣、石碑、忠魂碑、透塀、寄付石碑、狛犬、灯籠、社号標、記念碑、随神像等。

キリスト教系

(建物)礼拝堂、教会、牧師館、会堂、修道院、伝道所、小神学校、神学校、教職舎、信徒育成所、信徒修行所、記念館、会館、納骨堂、事務所等。
(構築物)塀、門扉、十字架等。

(2)付属設備

暖冷房設備、照明設備、通風設備、昇降機等。

(3)その他固定資産

宗教法人が所有していた神具、仏具・仏像等。
但し地震発生時に実在したこと、地震により滅失・損壊した建物に設置されていたことの確認ができる必要があります。

(4)土地

原状回復事業の一環として要する、敷地の盛土などの整地、地盤改良等。

3.指定寄付金の募集限度額

上記、対象施設等の現状回復に掛かる費用が募集限度額となりますが、この募集限度額から①自己資金、②借入金、③補助金を差し引いた額が実際に募集できる金額となります。

 

※銀行等の借入金を指定寄付金で返済することは認められておりません。

4.募集可能な期間

所轄庁の確認を受けた日の翌日から3年以内で、寄付金の募集要項で定めた日までになります。

5.申請手続きの流れ

(1)宗教法人が自ら申請する場合

①事前準備

建物等の調査、寄付金を募集する必要性等の検討を行います。(所轄庁との事前打合せも行います。)この結果、募集条件に該当し必要性もありと判断した場合、寄付金用の口座開設、寄付の募集方法を検討・決定します。

②所轄庁への申請

申請書類一式を作成し添付書類を添えて所轄庁へ申請を行います。
〔添付書類〕
・申請年度収支予算書、前年度、前々年度の収支計算書
・能登半島地震により滅失・損壊をしたことを証明する書類(被災届出証明書等)
・見積書等の資料(工事請負契約書、工事見積書等)

③募集開始

申請が所轄庁より妥当なもの判断された場合、確認書が交付されます。(確認日の翌日から募集の開始が可能となります。)尚、募集を開始から終了するまでの期間については、毎月ごとに寄付金の件数、金額等の公開、一年ごとに原状回復の実績、収支実績の公開を行う必要があります。(ホームページ等により)

④報告

募集開始後は、下記の報告を所轄庁に行う必要があります。
ⅰ)年次報告(会計年度終了後4か月以内)
ⅱ)募集終了報告(目標額に達した場合、募集期間終了後1か月以内)
ⅲ)募集終了後事業報告(募集終了後、原状回復が完了するまで会計年度終了後4か月以内)
ⅳ)完了報告(原状回復完了後1か月以内)
〔添付書類〕
・収支明細書、通帳の写し等

(2)包括宗教法人が取りまとめて申請する場合

包括宗教法人が被包括宗教法人を取りまとめて寄付金の募集を行う場合、最初に被包括宗教法人が所轄庁に対し副申申請を行います。次に副申書のの交付を受取りましたら、申請書類一式と併せて包括宗教法人に提出します。

 

包括宗教法人は、書類等を取りまとめ、包括宗教法人の所轄庁へ確認申請を行います。確認書の交付を受けましたら寄付金の募集開始等について包括宗教法人が行って行くことになります。

6.まとめ

説明する女性
指定寄付金制度について解説させて頂きました。能登半島地震による特例の指定寄付金制度を利用するには、地震により建物等が滅失・倒壊したこと、募集できる寄付の金額は自己資金等差し引いた額であることなどの制限もありますが、通常の寄付と比べ税制上のメリットもある指定寄付金制度を利用する事で寄付が集めやすくなるとも言えます。

 

但し、寄付の募集等については、自ら行う必要がありますので、ホームページ等により幅広い方に寺院等の現状について知って頂くこと(情報発信)も必要になります。(包括宗教法人にて一括して行う場合を除く。)どの様に進めるべきか?一度検討されて見ては如何でしょうか。

 

※この制度は、一般に募集するものであり、特定の方のみを対象とする募集は認められておりません。

 

ご不明点等がありましたら、お気軽にご相談下さい。当事務所では寺院法務に関するサポートを行わせて頂いております。

 

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