《不活動宗教法人》とは?基準・問題点など解説いたします。|大塚法務行政書士事務所(東京都)
不活動宗教法人について、第三者により法人格が不正に取得・悪用される恐れもあることから、文化庁では実態を把握し速やかに整理を進めるとし「不活動宗教法人対策マニュアル」を公表しております。ここでは、その内容をもとに解説させて頂きます。
行政書士 大塚博幸
行政書士 大塚博幸

不活動宗教法人とは?基準・問題点など解説

廃寺
・不活動宗教法人について、その法人格の売買等がニュース等で取りあげられていますが、脱税等の行為に悪用される恐れもあることから、その対策として文化庁(宗務課)では「不活動宗教法人対策マニュアル(改訂)令和5年12月」(以下、対策マニュアルという。)を公表しております。

 

その中で文化庁は、宗教法人が不活動宗教法人に該当するか?
 迅速に判断し、事実関係を確認の上で速やかに整理を進めると明記されています。

 

そもそも不活動宗教法人とは、どの様な状態なのか?、判断基準は?、どの様な問題点があるのか?など解説していきたいと思います。

 

 

1.不活動宗教法人とは?

不活動宗教法人とは、公表されている「不活動宗教法人対策の推進について(文化庁宗務課)」の中で下記の様に述べられています。
説明する女性

 

・宗教法人として設立されながら、代表役員の不存在や礼拝施設の滅失等の理由により、実態として宗教活動を行っておらず、法人格のみ存在している状況に陥っているもの。

2.不活動宗教法人の基準

不活動宗教法人するか?具体的な判断基準は「対策マニュアル」の中で述べられており、判断基準として5つの条件が示されています。
説明する行政書士
(一部省略し要点を掲載させて頂きます。)

① 連絡がとれないとき

・宗教法人の代表者や事務担当者の所在が明らかでなく書面や電話等でのやりとりができず、(省略)一般的な連絡確認方法によっても連絡がとれない場合には、不活動宗教法人として位置づけ、実態の確認を行う。例えば、事務所備付け書類の写しの提出について督促状を発送したにもかかわらず、当該書面が不達となった場合や、電話等で状況を確認しようとしても、不通となってしまった場合。

 

② 事務所備付け書類が理由なく連続して提出されないとき

・事務所備付け書類の写しの提出義務を履行しない宗教法人については、(省略)過料の措置を講じることが必要であるが、適正に督促等を講じているにもかかわらず、2年続けてそのような事態が生じた場合。

 

③ 所轄庁の調査結果により判断できるとき

・宗教法人から提出された事務所備付け書類の確認、申請された規則の変更等の認証の過程において、法人の同一性が疑われるなど、事実関係を調査すべき事情があった場合において、調査を実施した結果、当該宗教法人に法第81条第1項第2号後段から第4号までに掲げる不活動による解散命令事由のいずれかに該当するおそれがあると認められるとき。

 

④ 関係機関からの情報提供等により判断できるとき

・所轄庁において収集した宗教法人に関連する情報資料や、外部の捜査機関・税務当局等からの情報提供等により、当該宗教法人に③にいう不活動による解散命令事由のいずれかに該当するおそれがあると認められるとき。

 

⑤ 法人からの申出等があったとき

・宗教法人の側から、宗教活動を停止・終了する旨の申出境内建物が滅失し再建の予定がない旨の申出、又は代表役員が死亡若しくは退任したことにより不在となり代務者又は後任者を置く予定がない旨の申出等があった場合において、当該法人が自ら合併・解散等を通じて法人を整理することが困難と認められるとき。

 

補 足

不活動宗教法人として判断されるケースとしては、・毎会計年度終了後に4か月以内に提出する「備付け書類」の提出がなし。・督促及び過料事件通知書に対しても応答がなし。・「備付け書類」の提出が2年以上なし。・寺院等に電話連絡も付かない。等の場合、不活動法人のリストに編入され所轄庁が実態の調査等を行い状況に応じて解散命令請求という流れになります。

 

3.不活動宗教法人の対策

住職
不活動宗教法人の対策としては、①活動再開、②吸収合併、③任意解散、④解散命令請求と4つになります。寺院等が自ら選択出来るものとしては、①~③になりますので、①~③について「対策マニュアル」等をもとに解説させて頂きます。

 

①活動再開

活動再開には、再開に向けた実態が伴う必要があると「対策マニュアル」にて述べられています。所轄庁の確認で活動が再開されていないと判断された場合、又は「備付け書類」の未提出が続く場合等は、解散命令請求が行われる可能性もあります。

 

尚、活動再開の確認資料として下記の書類等の提出を所轄庁から求められることになります。

 

ⅰ.代表役員が不在(死亡等)の場合、代表役員の変更登記及び登記変更の届出
ⅱ.「備付け書類」の提出
ⅲ.継続して活動していたこと証する書類
ⅳ.活動再開計画書(任意)等

 

その他、不活動に至った経緯等、所轄庁の確認を要するものがありますので、事前に所轄との協議を行い助言・アドバイス等を頂いた方が良いかと思います。

 

②吸収合併

責任役委員会等の規則で定める手続が可能な場合、関連宗教法人、被包括宗教法人が選定する宗教法人との合併も選択肢の一つになります。この吸収合併をを行う場合には、吸収される側の権利義務は吸収する側の宗教法人が引き継ぐことになりますので、任意解散・解散命令と比べ清算手続きが不用になるといったメリットもあります。

 

● 吸収合併の流れとしては・・
ⅰ.合併契約案の作成
ⅱ.合併の決定(規則に定める手続により)
ⅲ.信者・利害関係人に対する公告
ⅳ.財産目録の作成(公告から2週間以内)
ⅴ.債権者に対する高校・催告
ⅵ.合併契約の締結
ⅶ.合併認証申請(所轄庁)
ⅷ.合併の登記(法務局)
ⅸ.合併届・解散届(所轄庁)

 

・上記の流れにより吸収合併を行っていくことになります。尚、吸収合併については、こちらのページ詳しく掲載しておりますので、こちらからご覧ください。→【 宗教法人の《合併》手順・手続について解説。】

 

③任意解散

規則の定める手続に従い任意解散を行います。解散後に精算手続きが必要になりますが、尚、吸収合併に比べて手続が容易であるとされ、規則変更が可能な場合は、解散手続についても簡略化することが可能です。但し、墓地に埋葬されている遺骨の引取り等の問題について検討しておく必要もあります。

 

● 任意解散の流れとしては・・
ⅰ.解散の決定(規則で定める手続により)
ⅱ.信者その他利害関係人に対する公告
ⅲ.解散認証申請・交付(所轄庁)
ⅳ.解散・清算人就任登記・印鑑届(法務局)
ⅴ.解散・清算人就任届(所轄庁)
ⅵ.清算手続き

 

・任意解散につきましては、こちらのページに詳しく掲載しておりますので、こちかからご覧ください。→【 宗教法人の《任意解散手続》について解説。】

4.不活動宗教法人の問題点

不活動宗教法人の問題について「不活動宗教法人対策の推進について(文化庁)」の中で、対策の必要な理由として下記の様に述べられています。

●不活動状態に陥った宗教法人を整理せず、放置してしまった場合、第三者により当該法人格が不当に取得され、脱税やマネー・ロンダリング等に悪用されるおそれがある。(反社会的組織の活動に用いられることとなるおそれもある。)

 

●宗教法人格の悪用は、宗教法人制度そのものに対する国民の信頼を損ねることにもつながる。

不活動宗教法人の放置は、第三者による法人格の買収等により、税の優遇措置を利用した収益活動等に関する脱税等に悪用される恐れがある為、文化庁は対策マニュアルの公表を始め「宗務行政の適正な遂行について」等の通知文などにより、不活動宗教法人の対策を打ち出しております。

 

5.まとめ

パソコンを打つ行政書士
一度設立された宗教法人は放置しても自然消滅するものではありません。寺院の運営の継続が難しい場合は、墓地使用者のことも考え、吸収合併等の対策を早めに検討しておく必要があるのではないでしょうか?

 

尚、文化庁による調査によると不活動宗教法人が全国で4,431件(うち包括宗教法人7、被包括宗教法人3,954、単立宗教法人470)〔令和〕5年12月31日現在〕あり、令和5年度の対策件数は解散命令6件、任意解散17件、合併14件、その他77件という数字が挙げられ、今後も増加する傾向にあるものと考えられます。

 

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