
お墓を建立する際、「将来、無料で永代供養墓に改葬してくれる」「安く永代供養墓に入れてもらえる」といったご住職との口約束を交わすケースがあるとお聞きします。しかし、当事者が亡くなってしまうと、その約束の具体的な内容を証明することが難しく、遺されたご家族が困惑するトラブルに発展しかねません。
このページでは、お墓に関する口約束が将来のトラブルを招かないよう、どのような点に注意し、どのように備えておくべきかを解説します。
大切な約束事を書面で残す重要性、事前に確認すべき事項、そして具体的なトラブル事例と書類作成例を通じて、安心してご先祖様を供養するためのヒントをお伝えします。
口約束も法律上は契約として有効ですが、後々問題が発生した場合、それを証明する書類等がなければ「言った言わない」の水掛け論に終わりかねません。後で互いに嫌な思いをしないためにも、大切な約束事は必ず書面で残しておくことが重要です。
先代のご住職が亡くなり、新しいご住職に代わる場合や、他の寺院からご住職が来る場合、口約束では記録が残されていないことが考えられます。当事者がいない状況では約束が曖昧になってしまうため、書面化が不可欠です。
「子供に渡しておきたいので、申し訳ありませんが一筆書いていただけますか?」など、丁寧に説明すれば理解を得られるでしょう。もし寺院に書式がなければ、ご自身で作成した書類を持参し、押印等をお願いする方法も考えられます。
もし、書面化を頑なに拒否された場合、将来的なトラブルのリスクも考慮し、その寺院と継続して付き合いができるか慎重に考える必要があるかもしれません。
お墓を購入する石材店との契約においても同様です。例えば、「改葬手続きや遺骨の移動をサービスで行う」という口約束で契約したが、担当者が退職後、会社が「そのようなサービスは行っていない」と主張し、最終的に当事務所に手続きをご依頼されたケースもあります。
このような「言った言わない」のトラブルを避けるため、特定の条件のもとに契約するのであれば、その条件を全て書面に明記しておくことが大切です。
寺院にお墓を建立する場合、原則としてその寺院の檀家となることが前提です。万が一家族が亡くなった場合、葬儀供養、戒名、納骨供養などをその寺院にお願いすることになります。檀家になる前に、以下のような点を明確に確認しておくことを強くお勧めします。
寺院によっては、お布施の金額が定められている場合もあります。確認しにくいことかもしれませんが、後で葬儀等で高額なお布施を要求されて驚くよりも、最初に確認された方が良いでしょう。「お気持ちで結構です」と言われた場合は、一般的な相場のお布施を渡せば失礼にはあたりません。
→ お布施の相場や渡し方については【墓じまいのお布施】相場・渡し方・注意点 をご覧ください。
毎年納める維持管理費の金額や支払い方法について確認しましょう。
お墓は代々承継していくものですが、承継者不在や遠方への移動などの理由で、将来的に墓じまい(離檀)を考える可能性もゼロではありません。墓地を建立する前に「万一改葬を行う場合、費用はどのようになるのか?」など、寺院の規約や方針を確認しておくことをお勧めします。
お客様からお聞きした実際にあった、口約束が原因で発生したトラブル事例をご紹介します。
亡くなった父親が、先代のご住職との間で「建立したお墓を将来的に永代供養墓とする」という約束でお布施を支払ったはず、という話をお聞きしました。しかし、確かな資料がなく内容も不明確なため、お客様ご自身で判断せざるを得ませんでした。
結果として、寺院の墓地を墓じまいし、別の霊園の永代供養墓に改葬することになりました。もし当時の領収書や覚書などがあれば、お墓はそのまま永代供養になっていたかもしれません。当事者が亡くなり何年も経過しているため、真相がわからないまま改葬に至ってしまったケースです。
口約束も法律上は契約となり有効ですが、後々問題が発生した場合、証明できる書類等がなければ「水掛け論」で終わってしまうことにもなりかねません。大切なのは、誰と誰がいつ、どのような内容で合意したのかを明確に書面で残すことです。ここでは、書面化に役立つ書類の参考例を掲載します。
合意した内容を簡潔にまとめる際に使用します。
覚 書(参考)
令和〇年〇〇月〇〇日
甲:〇〇 〇〇
乙:〇〇 〇〇
甲乙は以下の内容について合意する。
一、甲の所有する〇〇家墓地は、本日から永代供養墓とし、乙が住職を務める〇〇寺院にて永代に渡り供養を行うこととする。
二、甲は、〇〇家墓地の永代供養料として、乙に金〇〇万円をお布施として本日支払うこととする。
三、〇〇〇〇〇・・・・
四、〇〇〇〇〇・・・・
甲乙は上記合意の証として下記に署名捺印する。
令和〇年〇〇月〇〇日
甲
住所:
氏名:〇〇 〇〇 ㊞
乙
住所:
氏名:〇〇 〇〇 ㊞
※参考例として掲載しております。状況に応じて内容を追記して下さい。
金銭の授受があったことを証明する際に使用します。
令和〇年〇〇月〇〇日
〇〇 〇〇 様
受領書
お布施 金〇〇萬円
上記お布施受領致しました。
住所 :
法人名:
代表者名: ㊞
※こちらから持参する場合の受領書(参考)例になります。〇〇様はご自身の名前を記入。
あくまでも参考例です。状況に応じて書類を作成してください。合意書等の場合は、ご住職と内容の確認しておきましょう。何も言わずに一方的に提出するのは失礼にあたります。
ご住職に限らず、大事な約束事は書面で残しておくことが基本です。特に金銭が絡む問題については、後々の誤解やトラブルを避けるためにも、必ず書面で残しましょう。口約束では時間と共に記憶が薄れ、互いの行き違いを生む原因にもなりかねません。
当事務所は、お墓に関する手続きを専門に行っております。改葬(お墓の引越し)等をお考えの場合や、寺院・石材店との約束事の書面化でお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。
平成21年開業の実績・経験豊富な事務所ですので、安心してご相談いただけます。専門行政書士が対応させていただきます。
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