・近年、「戒名は不要」という考え方を持つ方が増えてきています。戒名とは、仏教において故人が仏弟子になった証であり、あの世での新しい名前としての意味を持っています。しかし、宗教的な価値観の多様化や費用面の理由から、戒名をつけない選択肢を選ぶ人も少なくありません。この記事では、戒名なしで葬儀や埋葬を行う際の注意点などについて解説させて頂きます。特に寺院墓地を所有されている方は、トラブルを未然に防ぐ為にも、ぜひ最後までお読みください。1.戒名なしで葬儀・埋葬を進める場合の基本事項戒名なしの俗名で葬儀や埋葬を行うことは可能です。但し、寺院に墓地を所有している場合や承継する場合などは、埋葬を拒否される可能性がありますので注意が必要です。(1)寺院墓地の典礼(儀式・儀礼)檀家である寺院のご住職に葬儀や埋葬をお願する場合、その寺院が定める典礼に従う必要があります。一般的には、寺院のご住職に戒名を付けてもらい、葬儀供養や埋葬を行うことが基本になります。戒名なしの希望を伝えた場合のリスク戒名なしを希望した場合、寺院側がこれを受け入れない可能性があります。特に戒名を重視する伝統的な寺院(宗派)では、葬儀や埋葬自体を拒否されることになります。また、その旨を伝えたことにより、寺院側から離檀を求められる場合もあります。寺院による対応の違い寺院(宗派)によっては、柔軟に対応してくれる場合もありますが、その様な寺院は、非常に少ないと思われます。いずれにしましても、事前に十分な話し合いが必要にです。(2)過去の判例によると墓地埋葬等に関する法律では、下記の様に定められています。第十三条 墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、”正当の理由”がなければこれを拒んではならない。つまり埋葬を埋葬を拒否するには、「正当な理由」が必要になります。過去の判例では、その寺院の典礼に従わない場合、埋葬を拒否できるとされてケース(津地判 昭38.6.21)がありますが、一方、諸事情を考慮した上で、典礼に従わない(無典礼)場合も埋葬を拒否できないとされたケース(宇都宮地判 平24.2.15)もあります。ちなみに後記の判例では、お布施や戒名料を支払わないという理由で埋葬を拒否できないと述べられています。但し、最終的には、諸事情を勘案して裁判所が判断を下すことになりますので、必ずこの様な結果になる訳ではありませんので、ご注意ください。2.戒名なしの埋葬を選択する際の手順(1)家族・親族間での話し合いまずは、家族や親族で「なぜ戒名をつけないのか」「戒名なしでどのように供養するか」をしっかり話し合うことが重要です。特に、以下のポイントについて意見を共有しておくと良いでしょう。戒名をつけない理由(費用、宗教観など)供養の形(俗名でのお墓や自然葬など)具体的な葬儀・埋葬先の選択肢(2)埋葬先の墓地管理者に事前確認戒名なしで埋葬を行う場合、埋葬先に事前に確認することが重要です。寺院墓地の場合戒名が必要とされる場合が多いため、寺院側に直接相談し対応を確認します。寺院側が納得しない場合は、別の埋葬先を検討する必要があります。公営霊園や民間霊園の場合公営霊園や民間霊園では、戒名を求められないことが一般的です。ただし、供養方法や埋葬手続きについては、事前に霊園管理者と相談しておくと安心です3. 改葬の検討・寺院墓地をを所有する場合、または承継する場合、その墓地の管理者に葬儀供養と戒名をお願いすることが礼儀とも言えます。しかし、どうしても戒名を付けたくないと思われる場合は、所有(承継)するお墓を墓じまいして別の霊園や納骨堂へ改葬することも考えられます。改葬手続の流れ現在のお墓の管理者に改葬の意思を伝える。改葬許可申請書を役所で取得し、必要な書類を準備する。新しい埋葬先を決めて、改葬先での手続きを進める。3.戒名不要の背景と社会的な変化戒名をつけない選択をされる方が増えている背景には、現代社会の変化が影響しているものと思われます。具体的には下記の様な理由により戒名不要と判断される方がおります。①宗教的関心の薄れかつては家族単位で仏教儀礼を重視する風潮がありましたが、現在では宗教的な儀式を省略したり、簡素化する家庭が増えています。②戒名料の高額化一般的には戒名料として数十万円~数百万円のお布施を求められることになります。この費用を負担と感じる方も方も多く、戒名をつけないと判断される理由の1つになります。③埋葬形式の多様化永代供養墓や樹木葬など、近年様々な供養形式が普及してきており、従来の伝統的な戒名や供養形式にこだわらない方も増えています。上記の様な理由により、戒名はつけないと判断される方がおります。実際に永代供養墓などに埋葬される方のなかでは、戒名を付けずに埋葬される方もおります。4.戒名なしでの葬儀・埋葬が引き起こす問題点戒名なしでの葬儀・埋葬を選択する場合、以下の問題が発生する可能性があります。(1)寺院との問題上記でも述べました様に、檀家になっている墓地に埋葬する場合、その寺院の住職に葬儀供養をお願いし戒名をつけて頂くことが礼儀ともいえます。戒名はつけないと寺院側に伝えた場合、葬儀供養、埋葬を拒否される可能性があります。また、そのような方は離檀してほしいと寺院側から求められる可能性もありますのでご注意下さい。寺院墓地は、伝統的な仏教の儀式を重んじており、戒名をその一つになりますので、戒名なしで歓迎されることは、ほぼないと思われます。実際に戒名をつけないと寺院にお話ししたところ、寺院側から反対されため、結局、その寺院の墓地を墓じまいし改葬を行われた方もおります。改葬に費用が掛かりますので、寺院側にお話しする前に、家族で良く話しあってから決められた方が良いかと思います。(2)家族・親族間の問題家族・親族の方のなかには、宗教的な儀式を重んじる方もおります。戒名なしでは、仏様が浮かばれないと考える方もおります。この様な方と戒名について意見の対立が生じる場合がありますので、事前にしっかりと話合いを行った上で、どちらにするか決められた方が良いかと思います。(3)供養先の問題お墓を所有していない場合、ご遺骨の埋葬先を決めることになります。一般的な公営・民営霊園では、俗名で埋葬することも可能ですので、戒名をつけない場合は、こちらから選択された方が無難といえます。また、お墓にこだわらない方は散骨を行うことも考えられます。5.まとめ過去の判例等を確認すると、戒名を付けないで寺院に葬儀供養をお願いした場合、「寺院側は拒否できる。」「寺院の典礼に従わない場合は、埋葬を拒否できる場合とできない場合が有る。(諸事情による。)」昭和の判例等では、拒否出来るというケースがありますが、平成の判例では諸事情を考慮した上で拒否できないというケースがあります。近年一般の方の宗教的な関心が薄くなっているとともに、戒名料と言われるお布施の金額も問題になっている場合があります。この様な状況により裁判所の判断も変化してきているのではないでしょうか?今後も状況に併せて更に変わる可能性もあるかと思います。お墓のことは、お墓専門行政書士に ご相談下さい!!お墓じまい・お墓の引越し(改葬)から、お墓選び・永代供養墓・散骨等のご相談も可能です。お墓専門行政書士が対応致します。経験・実績豊富な事務所です安心してご相談下さい。(AM9:00~PM18:00)無料相談はこちらから»» 次の記事:檀家以外の墓地承継(埋葬)は可能ですか? »»«« 前の記事:相続発生!お墓の費用は誰が負担するのか? ««TOPページ・お墓の手続き相談・代行のトップページは、こちらからお墓の記事一覧TOP・お墓の記事一覧のトップページは、こちらから
